中野毅氏による『宗教とグローバル市民社会』書評

ロバート・ベラー『宗教とグローバル市民社会』(島薗進・奥村隆編)(『公明新聞』2014年8月18日)。

「2012年秋、カリフォルニア大学名誉教授で著名な社会学者ロバート・ベラーが来日し、立教大学他での講演等を高齢にもかかわらず精力的にこなした」
『宗教とグローバル市民社会
ロバート・ベラーとの対話』
ロバート・N.ベラー,島薗 進,奥村 隆 編
 
「本書は、その時の講演、招聘者の論考などを収録し、彼の人生、主な研究テーマ、人類と宗教の未来への憂いと願いなど、彼のすべてが見事に描き出された好著である。」
 「ベラーは同時代人の先駆者としての丸山の業績に共鳴し、近代は自由や人権、民主主義を擁護し、国家から独立した市民社会と公共圏を重視する「倫理的プロジェクト」であるが、それを攻撃するファシズム
ファシズムの危険性に現在も晒されていると警告する。ファシズムの特徴は反共主義だけでなく、自国は他と異なり優れているという例外主義(特殊主義)、建設的な原理が欠如したナショナリズムを伴い」
「反対者を暴力的に抑圧する。丸山は、それが日本やドイツのみでなくアメリカにもあったことを鋭く指摘したが、ベラーは現在のアメリカや日本の、そして中国のナショナリズムに、同様のものを見出した。」
「それを克服し、上記の普遍的価値にもとづくグローバルは市民社会を発展させていくために、日本はナショナリズムを克服した国家の模範を示し、その旗手として世界政治に積極的に参画すべきである」
「まらグローバルは倫理的基盤として主要な宗教自己批判をしつつ発展することが必要であると主張する」「ベラー氏は翌13年に急逝された。われわれは自分たち自身で、その道を開拓し、進んでいかなければならない」