史上空前の失敗!? 賃下げ政策アベノミクスになぜ人々はだまされているのか/明石順平

史上空前の失敗!? 賃下げ政策アベノミクスになぜ人々はだまされているのか

GDPかさ上げの「ソノタノミクス」で隠された現実

それでも皆がアベノミクスに異を唱えないのはなぜでしょうか。
明石
わかりやすいからでしょうね。国民は単純なんですよ。今までの選挙結果を振り返ってみると、小泉純一郎首相が「郵政民営化」と言ったときは、誰も意味をわかっていなかったけれども大勝しました。「政権交代」を叫んで大勝した民主党がダメになった後は、アベノミクスで大勝している。全部ワンフレーズで選挙の結果が決まっています。ワンフレーズポリティクスって、選挙に勝つためには正しいんですよね。

──日本人に、船が沈みかけている自覚はあるんでしょうか。
明石
私は「この船はいったん沈む」と思っていますが、その点に共感している政治家はほとんどいませんね。

──それでもまだ国家として存続しています。
明石
まだだませているということです。円の信用が続く限りは続きますが、世界に「日本、ダメだな」と思われたら、ドーンって行きますよ。人類史上最悪の恐慌が来るでしょうね。

──ものすごく悲観的な見方をしていますが、衝撃を和らげる方法はあるのでしょうか。
明石
ありません。財政再建の方法は緊縮と増税です。「死ぬほど痛い目に遭う」か「死ぬか」の二択という状況です。でもいくら説明しても理解を得るのは不可能でしょうから、私は財政再建を完全に諦めています

──そんな状況の中、2019年10月には消費増税が予定されています。
明石
延期するんじゃないですか?消費税率を2%上げたところで、財政状況はたいして改善しません。もうすぐ死ぬ人に注射をするようなものです。そこでまた国民は「増税が延期された! ワーイ!」ってだまされるわけです。でも、さすがに3回も延期してしまったら、本当に通貨の信用を維持できるのでしょうか。

──日本の危機は、いつ来るのでしょうか。
明石
2023年には後期高齢者が2000万人を突破します。団塊の世代後期高齢者(75歳以上)に達することで、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている2025年問題もあります。後期高齢者2000万人以上という水準は50年間続き、社会保障費の増大で政府の資金繰りは絶望的な状況になりますので、円の信用を維持したままで2020年代を乗り切れるとは思えません。私はもう破滅的事態を覚悟しています。そこからどう立て直せるか、という点が重要です。