受け皿にあらず 自民の毒が回った“都民ファ国政版”の悪質

受け皿にあらず 自民の毒が回った“都民ファ国政版”の悪質

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大型台風とともに日本列島に吹き荒れた解散風。安倍首相が突然、臨時国会の冒頭解散を決めたことでアワを食っているのが、小池都知事に近い若狭勝衆院議員や民進党を離党した細野豪志衆院議員らが結成を目指す新党だ。

 民進党から離党者が続出したのは、若狭氏らが近く結成する国政版“都民ファースト”への期待があったからだ。落ち目の民進党より、小池人気にすがった方が当選できるかもという打算である。民進党離党組では、長島昭久衆院議員、木内孝胤衆院議員、笠浩史衆院議員、後藤祐一衆院議員らの参加が見込まれていた。

 だが、結党に向けた作業は一向に進んでいない。内情を知る関係者がこう明かす。

「“オレが、オレが”の人たちばかりだから、内輪モメで何も決まらない。目立ちたがりの若狭氏は2回生なのに党首になるつもりで、閣僚経験者の細野氏や、5回生の長島氏は面白くない。そこへ加えて、若狭氏に近い細野氏と、都民ファーストの野田数前代表に近い長島氏のどちら側が主導権を握るかの争いもあった。結局、若狭氏が細野氏との会合に小池知事を引っ張り出し、“お墨付き”をもらう形で主導権を握ることに成功した。ただし、この先もスンナリいくとは思えません。まだ党名すら決まっていないし、誰が参加するかもハッキリしない。臨時国会前に目指した新会派の結成さえ内輪モメで頓挫したのに、こんな状態で新党なんて本当にできるんでしょうか」 若狭氏は、自身が発足させた政治塾の受講生を中心に「衆院選に100人規模の擁立を目指す」と豪語していた。しかし、塾は16日に開講したばかり。あと1カ月では候補者選定もままならない。もちろん、そういう準備不足を見越して、安倍首相は解散を仕掛けたわけだ。

■政権批判の受け皿と思ったら大間違い

「解散直前に国会議員が5人集まって新党をつくることは可能でしょうが、民進党からの離党者ばかりでは選挙互助会の“第2民進党”にしか見えません。かといって新たな候補者の擁立も難しい。選挙資金もない、手足になって働く組織もないのでは、とても選挙を戦えないからです。躍進が望めない以上、小池知事が全面的に応援に入ることもないのではないか。公明党との関係もあるし、世論の動向を見るのが小池流です。今回の解散・総選挙は若狭氏に任せ、小池知事は距離を置くとみられます」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)小池人気をあてにした新党なのに、小池知事本人が選挙に関わらなければ、「都民ファーストの国政版」という看板にも疑問符がつきかねない。

「新党に集まるのは、民進党からの離党組も含め、ほとんどが改憲派ですよ。国会に改憲勢力が増える分には、安倍首相も大歓迎でしょう。政権批判もどんどんしてもらって構わない。それで野党の票を食ってくれれば言うことないね」(自民党の閣僚経験者)

 反自民のつもりで投じた票が、安倍政権の補完勢力になるのでは目も当てられない。烏合の衆の怪しい新党には、自民党の毒が回っていると見るべきだ