(7.7報告①)まやかし「加憲」も「改憲」も、どっちも危ない!-24条が安倍政権と改憲右派に狙われる理由

(7.7報告①)まやかし「加憲」も「改憲」も、どっちも危ない!-24条が安倍政権と改憲右派に狙われる理由

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山口智美 (モンタナ州立大学教員、文化人類学
右派が「加憲」にこだわる理由

24条を変えようとしているのは誰でしょうか? 彼らはどんな動きをしているのでしょうか?
改憲右派として活発な動きを見せている団体には、日本最大の右派団体「日本会議」とその女性部の「日本女性の会」、日本会議系の右派が憲法に特化した運動体として立ち上げた「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などがあります。これらの改憲右派はこれまで、次のような活動をしてきました。
・国会議員署名
・地方議会での憲法「改正」決議の推進
国民投票に向けての名簿作りを目指す1000万人改憲署名運動や大規模集会
・「憲法おしゃべりカフェ」など小規模な勉強会の開催
・全国各地を回るキャラバン
改憲DVDの上映運動
そして最近はインターネット動画サイトとして「KAIKENチャンネル」を立ち上げるなど、さらに多彩な活動を展開し、改憲スケジュールを立て着々と改憲に向けて取り組んでいます。
そのような動きの中で安倍首相から発された、現行9条に自衛隊を明文で書き込むという「改正」表明は、唐突に見えて実は、改憲右派の間では以前から主張されてきたものです。
憲法に不足しているところを補うという、「加憲」を目指すべきだという主張は例えば、安倍首相のブレーンと呼ばれる伊藤哲夫氏を代表とする「日本政策研究センター」の発信にもみられます。同センターの最新刊行物『これがわれらの憲法改正提案だ』(伊藤哲夫、岡田邦宏、小坂実 2017年)では「現行24条には手を触れるつもりなどない」が、それを補完するものとして家族保護の条項を加えた「加憲」を目指すべきだ、と明言しています。一方これまでの自民党の24条改憲案は、家族の保護に言及せず『家族は、互いに助け合わなければならない』と定めているために護憲派の反対を招いている、と彼らは主張しています。
つまり、彼らが現行24条に手を触れないのは、24条を尊重しているからではありません。24条が少子化や家族の崩壊を招く、というのが彼らの基本認識。個人ではなく家族を「社会を構成する最も基本的な単位」 とし、家族は「次世代の再生産機能を担う集団」とする考え方、別姓や性的少数者など、多様な家族のあり方を許容しない姿勢など、現行24条を否定する方向性は同書にも明らかで、そこは揺らいではいないのです。
そもそも彼ら改憲右派の考える「加憲」というのは、リベラル派でも意見の割れやすい「自衛隊明記」などを掲げて憲法を変えさせたくない人たちの分断を狙い、まず改憲の前例を作り、その後さらなる改憲につなげていこうとするもの。24条も含め、人々の同意を取り付けやすい、と彼らが考えている「加憲」論は、自民党改憲案と同じように危ないものなのです。