2017英国総選挙:コービン労働党が奇跡の猛追。「21世紀の左派のマニフェスト」とは?

2017英国総選挙:コービン労働党が奇跡の猛追。「21世紀の左派のマニフェスト」とは?

労働党マニフェストを掲げるコービン(写真:ロイター/アフロ)
「6月8日の総選挙は保守党の大勝」と二週間前に東京で言いまくってきたわたしだが、全くそうじゃない事態になってきた。今月初めまで20%開いていた与党保守党と労働党の支持率の差が、6%(ITV「Good Morning Britain」のためSurvationが行った 5月29日の調査)まで急速に縮まり、コービン党首率いる労働党が奇跡の猛追を見せている。

21世紀の左派のマニフェスト

コービンに退任を迫るような文章を書いていたオーウェン・ジョーンズも、「僕は、自分がこれほど派手に間違っていたことはないと思う」とガーディアンのコラムに書いた。そのジョーンズが「21世紀のレフトのマニフェスト。世界中で苦戦している左派はこれをテンプレートにするべき」と言う労働党マニフェストは、「左派ポピュリスト・マニフェスト」と呼ばれている。わたしの周囲にも「(コービンが首相というのはどうかと思うが)あのマニフェストはいい」という人がとても多い。
NHSへの大規模支出、大学授業料の再無料化、学校・警察・福祉など削減されてきた公共サービスの復興、鉄道、郵便などの再国営化。コービンの言っていることは2015年から変わっていないが、マンチェスターの爆弾テロの後で、「こんなときに警察の人員を削減している場合か」の不安が広がっている今、リアルに地べたの人々の心に響いている。
労働党マニフェストには、緊縮財政で暗い国を作らなくとも、投資と成長で収入を増やせば財政は健全になるのだと書かれている。そして、ヤニス・バルファキスが率いる欧州規模でEUに改革を求める組織DiEM25のスローガンである「ニューディール」の言葉もしっかりと組み込まれている。
バルファキスの同志である経済学者(80年代の伝説の労働党左派議員でもある)スチュアート・ホランドは、著書『Beyond Austerity: Democratic Alternatives for Europe 』に、「ナチスハイパーインフレが生んだと信じている人が多いが、実はナチスを生んだものはデフレと緊縮だった」と書いている。現在の世界情勢を鑑みれば、労働党マニフェストを「世界の左派はテンプレにすべき」とオーウェン・ジョーンズが言うのも道理だ。
「右傾化した」はずだった英国の人々が、「Mrマルキシスト」の異名を持つド左派党首の政党に戻ってきていることがその何よりもの証拠だろう。