閣僚の靖国参拝は日本人にとって悪夢・島薗進

【閣僚の靖国参拝は日本人にとって悪夢】島薗進

靖国神社は日本人を神聖天皇崇拝に駆り立て、無謀な戦争へと突き進み多くの民に塗炭の苦難を強いる動力源となった。戦後も神聖天皇崇拝への回帰を目指す勢力が利用しようとしてきた特定宗教施設。国家的な慰霊施設にできるはずがない。
日本人の靖国への違和感を整理する。
1)神道を国民に強制する機能を果たした。2)強度の天皇崇敬がもとにあった。「天皇にいのちを捧げる」という信念が核にあった。3)党派性が強く特定の正義感に依拠。同国民であっても「敵」を排除してきた。
4)軍隊の神社であり、境内に軍事博物館(遊就館)をもち、軍国主義の正当化や軍隊賛美と結合。
5)崇高な死を賛美することによって多くの人々に無残な死を強いるのに貢献した。
6)多数の国民に非業の死を強いた軍事指導者を神としている。
(補)戦時中、「特攻」や「玉砕」が賛美された。どうしてかくも民のいのちが軽視されたのか。天皇のために犠牲となる軍人・兵士が賛美されたのと表裏。その軍事的神聖天皇崇敬を育てたものとして、靖国神社軍人勅諭は代表的。「天皇の軍隊」と不可分。
日本会議神道政治連盟立憲主義に対して「神権的国体論」、すなわち宗教的な天皇崇敬を復興したい勢力。この人たちにとって靖国神社伊勢神宮とともに国家神道復興の肝。今の日本はすでに彼らが目指す権威主義的な国家に向かっている。
戦争の死者のための慰霊施設は特定宗教によらないことが条件。これは最高裁判決による。そこで、小泉政権下の「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」(2002年)が靖国ではない追悼施設が必要と結論づけている。
新たな追悼施設を作る案には読売も公明党も賛成。米国は暗に千鳥ヶ淵での追悼を是としてきた。マスコミは閣僚の靖国参拝に反対するのは主に中国・韓国だという書き方を改める必要がある。日本人が受け入れているかのように思い込ませる作用がある。