元国税調査官が暴露。「日本の法人税は世界的に高額」という大嘘

国税調査官が暴露。「日本の法人税は世界的に高額」という大嘘

大企業の法人税の抜け穴は多々ありますが、代表的なのは2003年に導入された「研究開発費減税」と、2008年に導入された「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度です。「研究開発費減税」というのは、簡単に言えば、「試験開発をした企業はその費用の10%分の税金を削減しますよ」という制度です。限度額はその会社の法人税額の20%です。「試験開発のための費用が減税されるのはいいことじゃないか」と思う人も多いはずです。しかし、この制度には大きな欠陥というか、カラクリがあります。この研究開発費減税は、実質的には「研究開発費を支出する余裕のある大企業しか受けられない」のです。中小企業も、当然、研究開発を行っていますが、わざわざ別途に研究開発費を出す余裕はなく、日常の経費の中で賄っています。そういう研究開発については、減税の対象にはならないのです。しかも、研究開発費の範囲が広く設定されているので、製造業の大企業であれば、だいたい受けられるという制度なのです。つまり、大まかに言えば、この制度は「大企業の法人税を20%下げた」ということです。実際に、この減税を使っているのは、ほとんどが大企業です。試験開発減税は、全体の0.1%にも満たない資本金100億円超の企業への減税額の8割を独占しているのです。次に「外国子会社からの受取配当の益金不算入」は、どういうことかというと、外国の子会社から配当を受け取った場合、その配当収入は課税対象からはずされる、ということです。たとえば、ある企業が、外国子会社から1,000億円の配当を受けたとします。この1,000億円の配当収入は、親会社の益金(課税対象)には入れなくていいということなのです。つまり、1,000億円の収入については、無税ということになるのです。なぜこのような制度があるのか?というと「現地国と日本で二重に課税を防ぐ」という建前で、そういう仕組みになっているのです。外国子会社からの配当は、現地で税金が源泉徴収されているケースが多いのです。もともと現地で税金を払っている収入なので、日本では税金を払わなくていい、という理屈です。が、この制度には巨大な矛盾があります。というのも、二重課税を防止するという意味ならば、外国で払った税金分だけを控除すればそれで足りるはずです。しかし、この制度では、「外国でいくら税金を払っているかにはかかわらず、配当金の全部を収入に換算しなくていい」ということになっているのです。だいたい配当金の税金というのは、現在、世界的に非常に安くなっています。20~30%前後です。20~30%の税金を引かれているからといって、収入全体を非課税にするのは明らかに不合理だといえます。この制度のおかげで、実質的にほとんどの多国籍企業が大幅に減税になっているのです。トヨタなどは、この制度ができたおかげで、2008年から5年間も日本の法人税を払わずに済んだのです。トヨタはこの5年間ずっと赤字だったわけではなく、赤字だったのはリーマンショックの影響を受けた2009年と2010年だけです。それ以外の年は大きな黒字を出しています。考えてみてください。世界中で稼いでいる日本一の大企業が、5年間も日本で法人税を払っていなかったのです。そんな馬鹿なことがあるか!ということです。こういう馬鹿なことが生じた最大の理由は、「外国子会社からの受取配当の益金不算入」なのです。
日本の税制では「租税特別措置法」という変な法律があります。「租税特別措置法」というのは、当初は税負担が公平になるように、収入が少ない業種などに特別な恩恵を与えるということでつくられたものですが、現実には、大企業や圧力団体を持つ業界が、政治陳情を行い、特権をもらうという制度になってしまっているのです。この「租税特別措置法」のような制度は、日本以外の先進国には見当たらず、日本特有の制度だといえます。他の先進国も、一部の人たちに税制の優遇措置を講じるようなことはたまにありますが、日本のように税収に大きく影響するような「特別扱い」はありません。この結果、日本では、大企業や富裕層の「名目の税率」は世界的に見て非常に高い状態になっているのですが、実質的な税負担率は非常に低い状態になっているのです。「日本の法人税は世界的に高い」とさんざん吹聴してきた政府の御用学者の方々には、ぜひ「租税特別措置法」の影響までを含めたところでの法人税負担率を語っていただきたいものです。日本の法人税が実質的に低いことは、日本企業の内部留保金を見てもわかります。日本企業はバブル崩壊以降に内部留保金を倍増させ446兆円にも達しています。また日本企業は、保有している手持ち資金(現金預金など)も200兆円近くあるのです。これは、経済規模から見れば断トツの世界一であり、これほど企業がお金を貯め込んでいる国はほかにないのです。アメリカの手元資金は日本の1.5倍ありますが、アメリカの経済規模は日本の4倍です。だから経済規模に換算すると、日本の企業はアメリカ企業の2.5倍の手元資金を持っていることになるのです。世界一の経済大国であるアメリカ企業の2.5倍の預貯金を日本企業は持っているのです!だから、本来、増税するのであれば、消費税ではなく、法人税であるべきなのです