<関東大震災95年>なぜ朝鮮人虐殺の事実を直視しないのか デマとトリックに騙されないために(加藤直樹)

関東大震災95年>なぜ朝鮮人虐殺の事実を直視しないのか デマとトリックに騙されないために(加藤直樹


自民党赤池議員がトリック本もとに虐殺否定
ところがこの報告について「到底信じられません」と断じた人物がいる。自民党赤池誠章議員である。2014年9月1日付の「防災の日 関東大震災を考える」と題したブログ記事で、そう書いている。ところがその根拠は、「災害救助のために、ボランティアなど支援を惜しまない私たち日本人が… 根拠なき『流言蜚語』によって、多数の無辜の朝鮮人を虐殺した」などとは信じられない、と言うだけだ。さらに、中央防災会議の報告をあっさりと否定する一方で、工藤美代子『関東大震災朝鮮人虐殺」の真実』を「大変な労作、好著が出版されました」と賛美する。さまざまなところで指摘してきたが、この本は「朝鮮人虐殺などなかった。デマだとされてきた朝鮮人暴動や井戸への投毒は事実であり、朝鮮人殺害は正当防衛だったからだ」と主張するトンデモ本である。朝鮮人虐殺否定論のほとんど唯一のネタ本だが、その内容は、流言をそのまま書いていた震災直後の新聞記事を証拠として無前提に示したり、工藤氏以外は誰も確認できない「後藤新平の一言」なるものを登場させて自説を補強したり、参考文献の名を挙げながらそこに書かれていないことを書くなど、初歩的な「トリック」を並べたものだ。