マスコミが報じない」は本当? 神道小学校めぐる疑惑、各紙の報道状況を調べてみた

マスコミが報じない」は本当? 神道小学校めぐる疑惑、各紙の報道状況を調べてみた

土地を購入した森友学園には、安倍政権の関係者や、改憲運動を目指す保守団体「日本会議」が関わっている。「報道が少ない」との声があるので、全国5紙を調べてみた。

学校法人「森友学園」が購入した大阪の国有地をめぐる疑惑。10億円級の土地に、学園側が支払っていたのは実質200万円だった問題だが、「報道が少ない」との声もある。新聞各紙はどう報じているのだろうか。

学校法人「森友学園」が購入した大阪の国有地をめぐる疑惑。10億円級の土地に、学園側が支払っていたのは実質200万円だった問題だが、「報道が少ない」との声もある。新聞各紙はどう報じているのだろうか。
森友学園が購入したのは、大阪府豊中市野田町の国有地約8770平方メートル。「ごみ処理費用」の名目で8億円割り引かれ、学園側が支払うのは実質200万だけだ。その不透明な取引に批判や疑問が集まっている。
この土地には4月、森友学園が運営する「瑞穂の國記念小學院」が開校する。「日本初で唯一の神道小学校」だという。
名誉校長は安倍晋三首相の妻、昭恵さん。校長の籠池泰典氏(森友学園理事長)は、政権に近く、改憲を目指す保守団体「日本会議」の大阪支部役員だ。
BuzzFeed Newsでは、これまでわかっている経緯をなぜ、国有地は「ただ同然」になったのか 首相夫人が名誉校長の神道小学校、疑惑の経緯はなどの記事にまとめています)

これについて、「メディアの報道が少ない」との声が出ている。そこで、BuzzFeed Newsは、全国5紙(朝日新聞、読売新聞、毎日新聞産経新聞日経新聞)の報道を調べてみた。

国会図書館で調査をしたのは2月22日午前。当地である大阪版と、東京版に限ってキーワード「森友学園」を検索した。記事数は22日朝刊までのもの。

記事本数がいちばん多いのは、全国紙として、いち早くこの疑惑を報じた朝日新聞だ。東京、大阪版で合わせて14本と、1番多い。

記事本数がいちばん多いのは、全国紙として、いち早くこの疑惑を報じた朝日新聞だ。東京、大阪版で合わせて14本と、1番多い。
朝日新聞は、豊中市議がこの土地の売却価格の開示を求め、近畿財務局を相手取り大阪地裁に訴訟を起こした翌日、2月9日の朝刊社会面で学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割かという記事を大きく展開した。
これを機に、財務省はこれまで非公表としていた土地の価格を公表。埋まっていたごみ処理を理由に、価格が8億円割り引かれていることが明るみになった。
その後も朝日新聞は連日報道を続けている。2月14日には、学園「ごみ撤去1億円」 国見積もりは8億円 国有地購入森友学園籠池泰典理事長の証言を報じた。
さらに2月22日の朝刊では、社説で豊中の小学校 不可解な点が多すぎるとし、社として徹底的に追求する構えを見せた。

2番目に多いのは、毎日新聞の計11本だ。

2番目に多いのは、毎日新聞の計11本だ。
毎日新聞も、豊中市議の提訴について初報で伝えている。ただ、大阪版社会面のみで、朝日新聞ほど大きな記事ではない。
2月14日には理事長のコメントを取り、夕刊では初めて東京版にも記事が掲載された。大阪の幼稚園、保護者に 『よこしまな在日韓国人、支那人』(2月17日)では、森友学園が運営する幼稚園で配られた「ヘイト文書」にも言及している。
また、2月22日には民進党の調査チームが現地を訪れたのに合わせ、「大阪・豊中の国有地売却8億円減額、根拠示せず」と問題の経緯を振り返る記事を社会面で展開した。

3番目は日経新聞。一気に差が開き、計4本だった。

3番目は日経新聞。一気に差が開き、計4本だった。
初報は2月11日。財務省が価格を開示した際に豊中の国有地売却、評価額の14%、1億3400万円で、財務省が資料開示」との記事を大阪版社会面に掲載している。
2月17日には毎日新聞が掲載した「ヘイト文書」に関する記事を、大阪版社会面に。2月22日にはこれまでの経緯をまとめた大阪の国有地払い下げで波紋 野党『安すぎる』国『適正』を社会面に掲載した。

4番目は産経新聞。計3本だ。

4番目は産経新聞。計3本だ。
初報は2月18日。「大阪・豊中の国有地 学校法人への売却額めぐり議論」と、これまでの経緯を細かくまとめた社会面の記事だ。
その後、2月21日には、学校を認可する立場にいる松井一郎大阪府知事の「ごみの撤去費用を誰がどのように見積もったのかを明らかにすべきだ」とのコメントを大阪版夕刊社会面で掲載した
2月22日には、民進党の調査チームが聞き取りをしたことを社会面で報じた。

いちばん少なかったのは読売新聞。計2本だけで、価格や経緯に触れている記事は一つもない。

いちばん少なかったのは読売新聞。計2本だけで、価格や経緯に触れている記事は一つもない。
初報は豊中市議の提訴について、大阪版の地方面にいわゆる「ベタ記事」を掲載。価格が開示されていないことを報じたが、値段については一切触れていない。
さらに2月18日には、これまで全く経緯を報じていないなか、政治面で、国有地売却で首相関与否定という小さな記事を掲載した。
文字数が少ないので引用する。
安倍首相は17日の衆院予算委員会で、大阪府豊中市内の国有地が学校法人「森友学園」に小学校の建設予定地として売却されたことに関連し、「妻が名誉校長になっているのは承知している。私や妻が(売却に)関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と述べた。
「小学校に通う子どもたちもいるのだから、(質問は)慎重にやってもらいたい」とも語った。民進党福島伸享氏の質問への答弁。
全国紙で最多の892万部を販売する読売新聞。この記事だけを読んでいる人はは、なにが問題になっているのか、さっぱりわからないのではないだろうか。