矢野ひろし
伊方原発核燃料装填、そして再稼働について今中さんに伺います。
やはり伊方原発と言うと、今中さんや小出さんらが関わった設置許可取消裁判ですよね。
大変なじみの深い原発だと思うのですが。

今中さん:
もう40年前になりますけれども、ちょうど私が愛媛の職場に入った時に、いわゆる伊方原発の裁判が始まってたとこでした。

矢野:
そうでしたね。今中さんが75年に入られて。

今中さん:
76年ですね。

矢野:
76年ですか。もう裁判は始まってたわけですね。

今中さん:
ええそうですね。私まだ本当に若くて、それで裁判のお手伝いで傍聴でいろいろ話を聞いてみると、
どうも原告の住民側の方が、議論では勝ってるんですよね。
いわゆる国側の証人なんてのは、弁護士さんの質問に答えられないというような事態がしばしば起きたりしたんですね。
ひょっとしてこの裁判、住民側が勝つんじゃないかなという風に、私、若いながら感じてたんですよ。

矢野:
なるほど。しかし、地裁と最高裁負けていくわけですけど。

今中さん:
そうなんですよ。裁判が結審するちょっと前になると、どういうわけか裁判長さんがぽろっと代わって。

矢野:
代えられるんですよね、あれ。本当に。

今中さん:
何がなんだろうと、私は思いましたけれどね。

矢野:
その時に、今もう伊方原発は1号機2号機3号機と、3機も出来てしまいましたが。

今中さん:
3つになりました。

矢野:
こんなこと想定できましたか?

今中さん:
いやぁー、四国電力、伊方ですよね。いわゆる中央構造線というのが目の前にあって、
それで、まさに瀬戸内海に向いて原発があるんですよね。もう信じられない話ですよ。

矢野:
この核燃料装填というのは、どんな作業なんでしょうか?

今中さん:
原発、原子炉というのは、核燃料というかウランの核分裂連鎖反応とかなりますよね。
燃料そのものがウランというやつですよね。ウランというやつを、ですから燃料ペレットというのにして、
それを燃料棒というのに、長い細い棒に詰め込んで、それを束ねたやつが燃料集合体です。
その燃料集合体、だいたい伊方だったら200本ぐらい集めて1つの燃料集合体になるのかな。
それを150体ぐらい原子炉の中に入れると、全体の炉心ができて、ようやく核分裂連鎖反応を始められる体制に入るというものです。

矢野:
これは、作業自体はそんなに危なくはないんですか?

今中さん:
作業はですね、いろいろ水の中でクレーンとか使いますから、クレーンから外れたりすれば問題ですけども、
まぁ特に危ないというものではないと思いますけども。

矢野:
なるほど。今回使われる燃料がMOX燃料ですよね。
使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料。
これ、今中さん大丈夫なんですか?

今中さん:
プルトニウムもいわゆる核燃料になる物質の1つですから、電力会社なり、というよりは日本政府がなんとかしたいんですよね。

矢野:
政府がですね。

今中さん:
日本政府は、原子炉から出てくる使用済み燃料を全部再処理してプルトニウムを取り出すという事なんですけども、
本来は、そのプルトニウムというのは、いわゆる高速増殖炉もんじゅというのがありますけれども、
それで使う予定だったんですけども、その高速増殖炉をやろうという炉心は20年前に破断しちゃったんですよね。

矢野:
そうですよね。動いていませんよね。

今中さん:
それでプルトニウムが余ってしまって、なんとかしたいと。
たぶん電力会社もMOXをやりたいとは思えないですよ。
安全性が悪くなる事はあっても、良くなる事はありませんし。

矢野:
電力会社の説明によりますと、燃えやすいプルトニウムの割合が低いんだと。
そして、ウランと混ぜるのだから大丈夫なんだというような事を言われていますけれども、本当なんでしょうか。

今中さん:
私の聞いてるところでは、いわゆる制御棒の効き具合が悪くなるとか、そういった問題はあるようですね。

矢野:
本来、プルトニウムは使う物ではないですよね。原発自体が。

今中さん:
そうですね、プルトニウム燃料は想定してませんから、そういう意味では安全性に対する余裕度みたいなものが減っていく方向だと思います。

矢野:
なるほど。そんなことをしてでも、やはりプルトニウムを消費しないといけないという政策ですね。

今中さん:
まず、そこの問題は、我々日本政府考え直さなきゃいけないだと思います。

矢野:
プルサーマル計画というのをなんとしてでも諦めきれないということなんでしょうか?

今中さん:
そうですね。再処理工場も残りますし、あのもんじゅさえまだ残ってるという不思議な原子力政策ですよね。

矢野:
さて、再稼働となりますと、新規制基準の下では、九州電力川内原発の1号機2号機、
そして、関西電力の高浜3号機4号機に続き5機目というふうになるんですが、
今のところ高浜は司法判断で差し止め中ですけれども、本当にこの再稼働必要なんでしょうか?

今中さん:
本当、私が聞きたい話でして、何年か前は夏で暑いと電力が足りない、電力が足りないと言っていたんですけども、
この夏なんていうのは、節電のせの字もないんですよ。

矢野:
そうですよね。

今中さん:
はい。私個人的にその辺不思議だなぁと思って調べたら、実は夏の最大電力量というのは、ここのところ毎年減ってるんですよ。

矢野:
えー。減ってるんですか。

今中さん:
減ってます。去年と比べると、夏の一昨年ですか。
一昨年、去年と比べると、ピーク需要で1000万キロワットぐらい減っています。

矢野:
そんなに減ってるんですか?

今中さん:
ええ、びっくりしました。

矢野:
それで、節電のせの字も出てこないんですね。

今中さん:
それがよく分からないんだけども、今頃太陽パネルが物凄い普及してますよね。
それで、夏のピークを抑えられてるんじゃないかなという気がします。

矢野:
なるほど。ということは原発は必要ないと。

今中さん:
我々庶民には必要ないですよね。我々にはリスクばっかり被さってくるもんですから。

矢野:
そうですね。今、リスクの話をされましたけれども、この伊方原発というのは佐田岬半島の付け根にあるんですけれども、
この避難計画も、私はこれ充分にできていないと思うんですが、今中さんどうですか?

今中さん:
そうですね。再稼働もそうですけども、一番けしからんのは原発の安全性の責任を持つべき、
いわゆる規制委員会、規制長がきちんと審査しないと。
避難経路等には、彼らは責任はないと、そういう態度を取ってる。やっぱり、私はこれは問題だろうと思いますね。

矢野:
規制委員会が責任を持たないんだったら、どこが責任を取るんですか?

今中さん:
安部さんは口だけの人ですから、はい。

矢野:
先程、今中さんのお話の中にもありましたが、この伊方原発の北側には中央構造線という活断層が通ってるということですよね。

今中さん:
皆さん、この前熊本の地震がありましたよね。
あれがだんだん大分の方に伸びていって、その先をずっと見たら伊方原発に届くなぁと。
たぶん多くの方がそう思って見られたんだと思いますよ。

矢野:
そうですよね。
忘れてはいけないいのが、南海トラフもありますよね。

今中さん:
そうですよね。はい。

矢野:
ということは、もう地震の巣のような所に伊方原発があるということですよね。
これは何としても、再稼働本当に必要ないんだったら止めてほしいと思うんですが。

今中さん:
というか、そこまでして我々電気を使わんならんのか、作らんならんのかという問題だと思います。

矢野:
なるほど。なんとかこの私たちも賢くならないとだめですよね。
すぐ目先のことをすり替えられると、原発のことを忘れてしまう。そうですね。
今中先生どうもありがとうございました。

今中さん:
どうもありがとうございます。