安倍官邸を苛立たせる、補欠選挙の「ある調査結果」

安倍官邸を苛立たせる、補欠選挙の「ある調査結果」
「地元の北海道新聞が、投開票日前に世論調査をしたんですが、それによると、補選で重視する政策の1番目は『経済』ではなく『年金介護などの社会保障』が36%と断トツでトップになったのです」(民進党幹部)
なんと安倍首相の金看板だった「景気・雇用」は19%で2番目に後退。さらに3番目には、「教育・子育て」が15%で急浮上した。つまり、1番目と3番目を合わせただけでも、もはや有権者の半数以上が「経済はもういい。社会保障をやってくれ」と訴えている、ということだ。3年半前とは有権者の意識が完全に変わっているのだ。
また、こうした意識は投開票当日の出口調査でも証明された。調査をした地元テレビ局によると、和田氏に入れた人の理由の1位は「景気・経済」、池田氏に入れた人の理由は「社会保障」が大半だったという。
これについて「大企業を向く『経済の安倍政権』と生活者を向く『社会福祉の野党』という格好の対立構図になってきた」と言うのは前出の民進党幹部だ。
有権者はこれまでアベノミクスに期待を寄せてきたが、いい思いをしているのは大企業ばかりで、いくら待っても地方や庶民に果実は落ちてこないと気づいたのではないか。その上、株価は下がり、『景気の気』も低下している。
有権者が年金や医療費といった将来の不安を解消する政策、女性にとっては特に子育て問題、若者にとっては格差や奨学金返還問題と、広く社会保障を重要視するようになったのです。アベノミクスを推し進めるというのは、もはや大きな票にはならないと思う」
社会保障」や「女性政策」「子育て」は、今夏の参院選の争点としてもこのままの流れが続く可能性は大きい。

安倍政権に矛盾が生まれる

一方、与党とてこの「潮目の変化」に気づかないはずがない。安倍首相や自民党幹部らも、今回の選挙でそれを感じ取ったはずだと首相周辺は話す。
「5月に、昨年から進めている1億総活躍社会の中身をまとめて発表しますが、補選の結果を見て、その大半は女性政策や子育て政策、社会保障、介護、若者の格差や奨学金の対応などを前面に押し出すことになると思います」
有権者社会福祉に目を向けている以上、参院選に向けて、一気に「経済から福祉へ」と方針を転換させるということだ。ただ、安倍政権にとって「社会保障」を前面に押すことは困難だ。というのも、安倍政権はこうした社会保障政策について、2013年12月に「社会保障プログラム法(俗称)」を成立させている。
この法律は簡単に言うと、今後増えつづける社会保障費用を、できるだけ削っていこうというものだ。つまり、医療や介護、年金、教育など社会保障分野は国の予算支出は縮小して個人の負担を増やし、介護などは地方自治体や各家庭での支援にシフトして行く方針を定めたもの。すでに、一部は実行され、お年寄りの医療費自己負担が増えたり、要介護者の基準が厳しくなったりしていることはご承知の通り。
つまり、安倍首相が社会保障を本気で改善して行くというなら、このプログラム法をそのままにしておくのは、どう考えても矛盾があるのだ。