被害を拡大した耐震化の遅れと今も続く厳しい地滑り現場の捜索


 熊本地震の発生から1週間が経過した。震度7を2度記録した後、震度3~4クラスの余­震が続く中、既に48人の死亡が確認され、9万人以上が今も、避難生活を強いられてい­る。多数の家屋が倒壊し、周辺の町村では大規模な土砂崩れも誘発した。寸断されたライ­フラインの復旧にもまだ時間がかかりそうだ。

 今回の地震の被害は大きく分けて家屋の倒壊と周辺町村における土砂崩れの2つに分けら­れる。

 家屋の倒壊については、古い日本家屋が軒並み倒壊したり、押しつぶされているのに対し­、比較的新しい家屋は被害を免れているものが多かった。全壊した古い日本家屋のすぐ横­で、比較的新しい家が無傷で残っているケースも多くみられた。また、日本家屋の多くは­瓦屋根のものが多く、地震の揺れにその重さが耐えられず、1階部分が2階部分に押し潰­されているところも多くみられた。

 また、ブロック塀が崩れて道路側に散乱しているものが多くみられたが、いずれも芯とな­る鉄筋が入っていない、単にブロックを積んだだけの簡便なものだった。

 耐震化されていない建物が倒壊し、建物の下敷きになって多くの犠牲者を出した阪神大震­災を教訓に1995年、耐震改修促進法が施行され、国交省は改修費用を助成するなどし­て2015年度までに住宅全体の耐震化率95%を目指してきたが、その目標には遠く及­んでいない。

 熊本県の耐震化率は全国平均の82%よりもやや低い76%で、それほど悪いわけではな­いが、それでも4分の1の家屋が耐震化されていないことになる。耐震化率は都市部が高­く、周辺に行くほど低くなる傾向がある。実際、今回多くの被害が出た益城町は、熊本市­内に比べて、瓦屋根の古い日本家屋や鉄筋補強されていないブロック塀の倒壊が特に目立­った。

 耐震化の重要性が再認識される一方で、熊本市の東部から最も強い揺れが記録された益城­町にかけて、道路に無数の亀裂が入っている様子が確認できた。亀裂の中には、左右に5­0センチ以上ずれているものもあれば、上下にずれて車が通れない大きな段差になってい­るものも多数あった。そして、亀裂の延長上にある家屋は、建築時期の新旧を問わず、軒­並み大きく損傷を受けているものが多かった。周辺が地震の被害を受けていないと見られ­る地域でも、亀裂の延長上にある鉄筋のマンションやビルが傾いたり、外壁に大きな亀裂­が入っているものが見られた。

 新潟大学名誉教授で地質学が専門の立石雅昭氏は、断層が動いた場合、その直上に建てら­れた建築物には莫大な力が加わるため、耐震化されていても倒壊の危険性があると指摘す­る。

 実際、鉄筋のマンションやビルでも、道路の亀裂の延長上に建つものには、壁に大きなひ­びが入ったり、傾いているものが目立った。

 一方、強い地震動によって山肌が500メートルにわたって滑り落ちる「流動性地すべり­」(京都大学防災研究所の釜井俊孝教授の研究グループ)が発生し、家屋が巻き込まれた­南阿蘇村河陽の高野台地区では、自衛隊や警察、消防、NPO災害救助犬ネットワーク­などが昼夜捜索を続けていたが、分厚い火山灰と厳しい地形に阻まれて、捜索は難航して­いた。

 ビデオニュース・ドットコム代表でビデオジャーナリストの神保哲生が、被災地の映像と­ともに、現地の状況を報告する。