「熊本地震の被災地支援に23億、パナマのモノレールに2800億」に批判噴出

熊本地震の被災地支援に23億、パナマのモノレールに2800億」に批判噴出

政府は20日熊本地震の被災者に必要な物資を調達するために今年度予算の予備費のうち23億円を使用することを閣議決定しました。その金額の少なさと決定の遅さなどに対する不満の声が上がっていましたが、そうした声にガソリンを注ぎ込んだのはパナマへの円借款でした。

4月16日に産経新聞は、政府がパナマ運河を横断するモノレールの建設事業に円借款を供与することを「熊本地震が発生した後の15日」に固めたことを報じました。総事業費は約3000億円とされ、円借款はその8割程度を賄うとされていました。
まずここで気をつけたいのは、被災地への支援と円借款は全く性格が違い、単純に比較できるものではありません。円借款はあくまで日本政府から発展途上国政府に対し、インフラ整備を目的として行われる長期・低金利の資金貸し付けであり、将来的には返還されるはずのもの。無償で提供しているわけではありません。
また、円借款を供与しているということもあり、このモノレールの建設事業を日系企業が受注することが考えられることから、国外に日本円が流出するものとも単純には言えません。
ただし、この円借款が返還されるのはずっと先の話になりますし、全て返還されるとも限りません。政府は2003年度からの10年間で2兆3000億円あまりを債権放棄していることが既に批判されており、2015年12月にもキューバに対して1200億円の債権放棄を行ったばかりです。
また、日系企業円借款に関する公共授業を受注したところで、それが国民生活にプラスになるかといえばもちろんそうとは限りません。ある意味円借款の原資である国民の税金をゼネコンをはじめとした企業の利益に置き換えているとも言えるわけです。
そう考えてもなお、全く同じ日に救援物資が届かず厳しい避難生活を送っている被災者に対して23億円を、そして外国のモノレールへの融資にはその100倍以上の2800億円を出すという行為が被災者に極めて冷淡に写るのは事実。原資となる税金を払っている国民からしても、おいそれと納得できる金額差ではありません。
地震発生から1週間が経ってなお被災地を訪れることもなく、与野党の中止の求めを振り切り強引にTPP特別委員会の審議を進め、熊本地震消費増税を延期する理由となる大震災とは認めず激甚災害指定を現時点でも行っておらず、さらには29日からのヨーロッパ外遊予定も1日縮めただけで中止もしないなど、これまでも安倍首相による地震をことさらに小さく見せるような動きには「サミット対策」などの批判もありました。
しかし今回はこれまでに増して被災者に対する配慮をまったく感じさせておらず、これでは国民感情を逆なでしていると批判されても致し方ないのではないでしょうか?