「安保法案に反対する東京藝術大学有志からのアピール」

「安保法案に反対する東京藝術大学有志からのアピール」

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私たちは東京藝術大学で学び、教育・研究に携わり、表現する者として、また一人の国民として、いまこの国で進行している深刻な出来事を、しっかりと見据え、学び、思考することをやめず、行動していくことをここに宣言し、声をあげます。
2015年 7月 16日、多くの憲法学者や、歴代の内閣法制局長官たちが憲法違反の疑いを指摘する中で、集団的自衛権行使容認の閣議決定を具体化するための安全保障関連法案が、国民に納得される十分な説明と審議も尽くされないまま、衆院本会議で与党により強行採決され、続く参院の審議でも、国民の懸念にはおよそまったく耳を傾けない姿勢で、強行採決が図られようと緊迫した情勢が続いています。
この法案により、自衛隊が地理的制約なく世界中どこにでも米軍と行動をともに出来ること、自衛隊は日本を攻撃する意志を表明していない第三国に対しても先制攻撃を加える可能性が排除されないこと、米軍に対する兵站活動で自衛隊が輸送する弾薬のなかには、化学兵器クラスター爆弾、さらには核ミサイルまで、法文上は排除されておらず、時の政権の判断次第で、いかようにも拡大解釈が可能となっていることなどが、国会審議のなかで明らかにされました。
教育基本法改定、特定秘密保護法制定、武器輸出の解禁、集団的自衛権行使容認の閣議決定、侵略の歴史に目を閉ざした首相の戦後70年談話、そして今回の安保法制など、安倍政権がひとつひとつ進めてきてきたそのそれぞれが、どれ一つをとっても戦後政治の一大転換となる施策の全体を見れば、私たちはそこに戦争の可能性を感じずにはいられません。
戦争は無数の人の命を無残に奪う、最大の人権侵害であるとともに、私たちの表現の自由、言論と思想の自由を奪います。
歴史的に見ても、国が戦争を始めるときは、国民のあらゆる生活が戦争一色に塗り込められ、言論・表現の自由は極度に制限されました。芸術は国民を戦争に駆り立てるプロパガンダの道具として利用され、戦争の推進役を積極的に果たす芸術家たちも少なくなかった反面、それに異を唱えようとする芸術家は非国民として徹底的に弾圧され、意に染まらない作品を作ることを強いられたり、創作を禁じられたり、獄中で拷問を受け殺されたりしたのです。
東京藝術大学の前身、東京美術学校東京音楽学校の学生たちも、戦争のため卒業を早めて勉学や創作の機会を奪われ、大ぜいの若者が戦場で無念の死をとげました。
戦後、これらの深い反省の上に立って作られた日本国憲法は、その第九条に「戦争放棄」を定めて政府の行為をしばり、自由と人権の下支えとして、私たちの芸術と学問の自由、国民ひとりひとりが人間らしく生きる権利を支えています。もう戦争を許す社会にだけは、どんなことがあっても二度としてはならないという、戦火を生き延びた人々の強い思いが、この日本国憲法に反映されているのです。
安全保障関連法案は、そうした憲法の平和主義と、世界の民主主義諸国が歴史的に共有してきた立憲主義の理念に立つ、この国のありかたを根本から転換し、法秩序さえ無視して、戦争と独裁への道を開くものです。
私たちはこの法案の即時廃案を求めます。
2015年 9月9日 自由と平和のための東京藝術大学有志の会
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呼びかけ人(計27名、9月10日11:00現在、50音順)
※藝大現職者は学科名と現職・専攻名などを、卒業生については職業のみの表記 とした。
東加奈子-先端芸術表現科 学生
荒井竜一 -学生課職員
安藤栄作 -彫刻家
井口達 -声楽家、バス
池辺晋一郎 -作曲家
石原海 -先端芸術表現科 学生
今井奈緒子 -オルガニスト東北学院大学教授
浦田拳一 -器楽科ファゴット 学生
大塚直哉 -古楽科准教授、チェンバロバロックオルガン
大森晋輔 -言語芸術講座准教授、フランス語
川嶋均 -言語芸術講座非常勤講師、ドイツ語
木島隆康-文化財保存学・保存修復油画教授
坂本龍一-音楽家
櫻田亮-声楽科准教授、テナー、カウンターテナー
鈴木秀美 -古楽講座非常勤講師、チェリスト・指揮者
土田英三郎 -音楽学教授、西洋音楽史
野口昌夫 -建築科教授、建築理論
長谷部浩 -先端芸術表現科教授
平田オリザ -アートイノベーションセンター特任教授、劇団青年団主宰
福中冬子-音楽学准教授、音楽美学・近現代音楽
松本猛 -ちひろ美術館常任顧問、横浜美大客員教授
松本由理子 -ちひろ美術館東京、元副館長
面出薫 -照明デザイナー
毛利嘉孝 -音楽環境創造科准教授
山川冬樹 -先端芸術表現科非常勤講師、ホーメイ歌手、現代美術家
山下実季名 -古楽チェンバロ 学生
米沢陽子-オルガニスト東京純心大学教授
綿貫公平-NPO法人文化学習共同ネットワーク理事