「『市民』の理論、今こそズシリ 松下圭一さんを悼む 行政・政治学者、新藤宗幸」『朝日新聞』2015年5月13日付
国の下請けでない新たな自治体像を提起
国家は国土と国民を守るべきものだーーこの考えを「錯誤」だと指摘したのは松下先生だった。
代表作の一つ「市民自治の憲法理論」で繰り返しそれを指摘し、さらに「都市型社会と防衛論争ー市民・自治体と有事立法」は、市民自治による安全保障としてジュネーブ4条約追加第一議定書(日本は2004年8月に加入)の言う「無防備地域」の宣言が、国(中央政府)のみならず自治体・市民にできることを指摘し、国家の擬制からの脱却を提起した。
理論家であると同時に、社会や政治の変革を忘れない研究者。その観点から先生は、現代の学問状況はこつこつと個人業績を積み上げるサラリーマン型の「私文化」としての「私研究」に変容しているとする
60年近くにわたって政治学・社会理論をリードしてきた「お圭さん」の警鐘は、ズシリと重い