核分裂反応は制御できのか?〜

 
 
 
湯浅誠
あけましておめでとうございます。
小出さん
はい、不思議なことに年だけは流れるようですね。おめでとうございます。
湯浅:
今日はですね、1月のテーマは「原発はなぜいけないのか?」でございます。なんかリスナーの方の中には、何をいまさらって方も大勢いらっしゃるとは思うんですが、それ以外に実は初めて聴くっていう方もおられるとは思いますので、すみませんがお付き合い下さい。
小出さん
はい。
湯浅:
まず、今日のテーマはですね「核分裂反応を人間は制御できるのか?」。まず、核分裂反応の核分裂とは何なのか? それと、核分裂原子力発電というのは、一体何がどう関係してるのかっていうことについてよろしくお願いします。
小出さん
はい。核分裂の核というのは、私達が原子核と呼ぶもののことなのですが、ずーっと長い人類の歴史の中で、所謂、元素と言うのでしょうか?水素、酸素、炭素、鉄とかですねアルミとか、そういう元素自身は別の元素には変換できないというのが、これまでの常識だったのですけれども、1938年の末になりまして、ウランという元素を別の元素、あるいは原子核に変えてしまうことができるということが発見されたのです。
その反応を核分裂反応と言うのですが、ウランというのは結構、大きな原子核なのですが、それが2つに、あるいは場合によっては3つに分裂してしまって、全く違う原子核、元素になってしまうということがわかりました。その時に、膨大なエネルギーが出てくるということもわかりまして、ちょうどその頃は第二次世界戦争の前夜だったわけで、それを使って爆弾をつくれないかということをすぐ考える人達が出てきたのです。
結局、何ができたかと言えばいわゆる原爆。日本というこの国は広島と長崎に2発の原爆を落とされて、たくさんの人々が苦難のどん底に落とされるということになりました。それを見てですね、原爆というのはものすごいと、普通のこれまで人間が使ってきた爆弾とは全く違う爆弾だということにみんなが気が付いたわけですし、これまで使ってきた薪であるとか、石炭であるとか、石油であるとか、そんな反応とは全く違うエネルギーが出るのであれば、それを人類の平和のために使えるのではないかというような期待までが生まれてしまったのです。
で、それで生み出されたのが原子力発電という技術で、実は私自身も「原爆は悪いけれども、核分裂のエネルギーを人類のために使いたい。原子力発電をやりたい」と思ってしまった人間なのです。
湯浅:
夢のエネルギーだということで、発電に応用されたのが原子力発電だと。
小出さん
はい。
湯浅:
で、小出さんも青年の若かりし小出青年はその夢にかけたということですね?
小出さん
はい。その通りです。愚かだったと思いますけれども、核分裂反応に夢を抱いてしまいました。
湯浅誠: その夢のエネルギーが夢じゃないということになっていったのは、核分裂が結局コントロールしきれないということに、いつかわかったからということなんですかね?
小出さん
はい。たくさんの理由がありますが、もちろん今、湯浅さんが言って下さったように、核分裂反応を人類がコントロールできない場合があるだろうと。もし、そうなってしまうと大変な被害が出てしまうので、そういう技術は使うべきでないと私は思うようになりました。
湯浅:
ほかにどういう懸念点というか?
小出さん
たくさんありますけれども、仮に制御でき続けたとしても、核分裂反応というものを使ってしまいますと、核分裂生成物、いわゆる皆さんが「死の灰」と呼ぶものが避けることなくできてしまうのです。
そのできる量たるや膨大な量ができてしまいまして、例えば今日では100万キロワットという原子力発電所が標準になったのですが、その原子力発電所1基を1年運転させるためには、1トンのウランを核分裂させる。そして、1トンの「死の灰」ができるわけですけれども、広島原爆で核分裂させたウランはわずか800グラム、まき散らした「死の灰」も800グラムだったのです。
つまり、原子力発電所というものは1基を1年運転させるごとに、広島原爆がまき散らした死の灰のゆうに1000発分を超える死の灰を避けることなく生み出してしまうという、そういう機械なのです。
福島第一原子力発電所はそれを今、環境にまき散らしてるわけですけれども、仮に大きな事故にならなかったとしても、生み出した核分裂生成物は消えないし、それを消す力を人類は持っていない。その毒物は10万年、あるいは100万年どこかに閉じ込めなければいけないという毒物であって、私達の世代がなんか電気が欲しいと言って原子力を使ってしまうと、10万年、100万年後の私達の子々孫々に、その毒物を押し付けるということをやってしまうことになります。そんなことは、到底許されないだろうと私は思います。
湯浅:
なるほど。10万年後、100万年後まで子々孫々に影響を与え続けるということを止めなきゃいけないので、ずっと遡って今、原発を止めないといけないということになるということですね。
小出さん
今すぐに原発を止めたとしてもですね、日本という私達の国では1966年から原子力発電というのを始めてしまいまして、すでに今日までに、広島原爆がまき散らした死の灰の130万発分を作ってしまった。
湯浅:
130万ですか。
小出さん
はい。もう気が遠くなるというかですね、その危険をどうやって考えていいかわからない程のものを既につくってしまったのです。私達の世代、何十年かのこの間の「何か電気が欲しい」「豊かに生きたい」とかいう、そういう欲望のもとにですね、ほんとに信じがたい程の毒物を生んでしまい、それをこれからの子々孫々に押し付けなければいけないということになってしまっているのです。もうほんとにいい加減に目を覚まさなければいけないと私は思います。
湯浅:
新年早々、気の引き締まるお話ありがとうございます。
小出さん
いえ。
湯浅:
今年も引き続き考えていきたいですね。
小出さん
はい。
湯浅:
小出さん、どうもありがとうございました。
小出さん
ありがとうございました。